<HiME>巧海×晶



「可愛いよ」

 何の躊躇いもなくそう言って、巧海はにっこりと笑った。

「ばっ……! そういうの、正面から言うんじゃねぇ……!」

 オレは恥ずかしくて巧海の顔を見れず、そっぽを向いた。

「え? どうして?」

「どうしてじゃねぇ! お前には恥じらいってもんがねぇのか!!」

「だって可愛いんだもん」

 ガッと怒鳴りつけても、まったく効果なし。
 それどころか、周りに花が飛んで見えるような勢いの笑顔を見せた。

(可愛いのはお前の方だろうがーーー!!)

 男のくせに、やたらほんわかとした雰囲気を醸し出す彼に、少々嫉妬するくらいだ。
 それでも、にっこりと微笑まれると、逆らうことなどできなくて。

「ほら、早く行かないとお祭り終わっちゃうよ? せっかくの晶くんの浴衣姿、皆に見せびらかさないと勿体ない」

 何がどう勿体ないんだか。
 小さく溜息をついて、差し出された手に、自分の手を重ねる。
 指を絡ませ、しっかりと握り。

「ああ、でも、こんなに可愛い晶くんのこと、皆に見せるのも勿体ないなー」

 さっきとは反対の意見を口にする巧海に。

「だ・か・ら! そういう恥ずかしいこと、平気で言うんじゃねぇーーー!!」

 そう怒鳴りつけてから、オレは巧海の腕に、自分の腕を絡ませた。

「……心配しなくても、オレはお前だけだからなっ」

 とても本人の顔を見て言うことなどできず、下の方へ視線を泳がせたが、巧海がどんな顔をしているのか気になって。
 ちらり、見やると。

「晶くん、耳まで真っ赤。やっぱり可愛い」

「ぎゃーーー!」

 ぎゅーっと抱き締められ、つい叫び声を上げてしまった。
 それでも巧海は楽しそうに笑っていて。
 まだ当分、こいつに勝てそうにはない。






ちょっと巧海に余裕を持たせすぎたかも…。
でも晶が可愛いんだから仕方ない(笑)