<KYO>アキラ×時人



「濃いなァ……」

 味噌汁の味見をして、ボソッと呟いた。
 ダメだ、また失敗。
 やっぱりボクには、料理なんて向いてないんだよね。

「どれですか?」

「っひぎゃあ!!」

 突然、後ろから声がして、奇声を上げてしまった。

「……『っひぎゃあ!!』って……人を化物みたいに」

「だ、だって! お前が急に現れるから悪いんだよ!!」

 怪訝そうな目を向けるアキラに、思わず怒鳴りつけた。
 ああ、またやった。
 我ながら、可愛くないなぁとつくづく思う。

「あなたの修行が足りないんですよ。私は別に気配を消してなんていません。そんなことより、それですか?」

 ボクが小さく溜息をついている間に、アキラはボクの手から小皿を取り上げる。

「あっ……!」

 ダメだ、と言う前に、アキラはそれを飲んでしまった。

「……」

「な、何だよ。不味いなら不味いってハッキリ言えばいいだろ!?」

 黙り込んでしまったアキラに、また怒鳴りつける。
 だから、こういう態度、直したいのに。

「誰もそんなこと言ってないでしょう? 別に不味くはないですよ。確かに、濃いですけど」

 特に不快そうな顔も見せず、アキラはケロリとして言った。
 不味くはない。
 でも、濃い。

「……やっぱりダメなんじゃないか」

 むぅっと、口を尖らせる。
 ああもう。
 せっかく不味くはないって言ってくれたのに。
 本当に、ボクって可愛くない。
 でもアキラは、ボクの態度なんて気にも留めてないみたい。

「平気ですよ。これくらいなら、水を足して薄めればいいんです」

「あ、そっか……」

「ま、これでも以前と比べればマシですしね。味噌汁なのに餡子が入っていた時はどうしようかと思いましたよ」

 思い出したくない過去の失態。
 こいつ、やっぱり嫌な奴だ。

「う、うるさいなぁ! もうあっち行ってろよ! 気が散る!!」

「はいはい、分かりました」

 背を押すと、アキラは肩を小さく竦めてから立ち去った。
 なんかムカつく。
 今に見ていろ。
 いつか絶対、「おいしい」って言わせてやる。






新婚っぽいアキ時。
現代版かどうなのかは微妙。多分違うと思う。
というか、ありえないよねー(苦笑)