「ため息も出やしない」

 そう言った口は、もうため息をついているんですけど。
 む〜っと口を尖らせて、少し睨むように彼を見上げる。
 けれど彼の鋭い目つきに、逆にビクリとしてしまって。

「なっ、何よ!!」

 悔しいのと恥ずかしいのとで、思わず声を上げてしまった。

「別に」

 彼は短くそう言うと、私の前に背中を向けて膝を折る。
 まさか、負ぶされって?

「さっさとしろ。オレの気が変わらないうちにな」

 何よ、いつもムカつくことしか言わないし、ムカつくことしかしないくせに。
 意地を張って断ろうとしたけど、ダメ。
転んで捻った足の痛みには勝てなかった。
珍しく優しい彼の態度に、負けてしまった。






「ポケットモンスターDP」 シンジ×ヒカリ

ありがちすぎるネタですいません…。