「忘れない」

 ガラにもなく、恋に胸をときめかせていたあの頃。

「忘れないよ」

 想いが通じ、嬉しさに涙が止まらなかったあの日。

「絶対、絶対に」

 2人寄り添って、いつまでも語り合ったあの夜。

「絶対、忘れないから」

 2人で過ごした、幸せな時間。
 いつまでも、いつまでもそれが続くと思っていた。
 けれど甘い夢は儚く。
 始まってしまった悪夢の日々。
 幸せな思い出より、悲しい思い出が多くなっていった長い年月。
 それでも。
 それさえも、全部。

「あちきは、絶対に、忘れないから……!」

 どんな残酷なことも。
 どんな悲惨なことも。
 すべて、あなたの思い出。
 忘れられない、あなたの思い出。
 この涙は、風に乗って。
 天のあなたまで、届くでしょうか――?






「SAMURAI DEEPER KYO」 四方堂→先代

たまには甘いのも書いてあげたいのですが…切ない方が好き(殴