「イフリート」 ニナミ&源三郎


「こりゃ傑作」

 頬を引きつらせながら、源三郎は呆れたように呟いた。

「でっしょー!? ニナミちゃん特製☆タバスコケーキ!」

 てへっとウインクをしながら、真っ赤なケーキを自慢げにニナミは掲げた。

「な〜にが『特製☆』だっ!!」

そんな彼女の頭を、源三郎はボカッとグーで殴った。

「いったー!! おっちゃんヒドイ!! 女の子になんてことすんのー!!」

 殴られた箇所を押さえながら、ニナミは涙目で抗議する。
 源三郎は、ギロリと睨み返した。

「ぁあ? そりゃあな、オレだって新商品を考えてくれてることには感謝してるぜ? だがなぁ……」

 ハァ〜っと深く溜息をつき、源三郎はビッと親指で後ろの調理室を指した。
 ニナミがケーキ作りに奮闘したために、調理器具と食器が散乱し、生地やクリームなどが壁や床に飛んででべちょべちょになった調理室を。

「ニナミ、ちゃ〜んとキレイにしとけよ! それと、今後辛い商品の試作は禁止だ!!」

「え〜っ!? そこまで〜!?」

「ったりめぇだ!!」

 源三郎はニナミの頭を拳で挟み、ぐりぐりとねじ込ませる。

「うっかりユウに味見させちまったのは誰だったかな〜?」

「きゃー! ごめんなさい、もうしません〜!!」

 源三郎は再びハァと溜息をつき、ニナミを離した。

「とりあえず、片付けの前に体温下げて、ユウの体温が安定するまで抱きついてろ。機械よりお前の方が早いだろうからな」

「はい! それなら任せて!!」

 ニナミは右手を上げて勢いよく返事をした。
 額に青筋を浮かび上がらせながら、源三郎はもう一発殴りたい気持ちを堪えた。

「ただし、ユウには片付けさせんじゃねぇぞ」

「え〜っ!?」

「『え〜っ!?』じゃねぇ!! 店燃やしたらただじゃおかねーからな!!」

 結局、源三郎は堪えきれず、ニナミの頭にはタンコブがひとつ増えたのだった。







イフリートを知らない方にはまったく意味不明のネタですね。すみません。