「イナズマイレブン」 楠木&高杉


 むぅ、と眉間にシワを寄せて、楠木は難しい顔をしていた。
 見つめているのはテストの答案用紙。
 今日の授業で返却されたものだが、ここは教室ではなく部室だった。

「楠木先輩、さっきから何やってるんですか?」

 すでに皆着替え終え、部活に行こうと外へ出始めている。
 にも関わらず、楠木は着替えもせずにテストをじっと見つめていた。
 そんな彼の顔を覗き込んで来たのは高杉である。
 楠木は高杉にちらりと視線を送ってから、困ったようにフゥと小さく溜息をついた。

「いやな、ここの答えにどうにも納得が行かなくてな……」

 楠木が指し、高杉がそれを追う。
 赤い丸ばかりがつけられた答案用紙の中で、唯一バツがつけられたのは、文章問題の主人公に対する友人の気持ちを述べよ、というものだった。
 国語は楠木の得意中の得意科目だと知っている。
 だから100点でないことの方がむしろ珍しいくらいだ。

「誰にも間違いはありますよ」

 高杉は励ますつもりでそう言ったが、楠木はそうじゃないと言うように首を横に振る。
 とんとん、と指で問題になっている文章を示されたので、高杉はそれを読んでみた。
 それから楠木の答えを見るが、間違っているとは思えない。

「……先生が、何か勘違いしてるんじゃないですか?」

「お前もそう思うか?」

「はい」

 高杉が力強く頷くと、楠木は今度はホッとしたように溜息をついた。

「後で先生によく訊いてみる。さぁ、早く部活に行かないとな」

 そう言って楠木は微笑み、テストを鞄にしまい込んだ。
 遠くから円堂の呼ぶ声がする。
 それに高杉が答えている間に、楠木は手早く着替え始めた。







何がしたかったのかと訊かれても困る(オイ