「イナズマイレブン」 鬼道×塔子


「塔子、怪我したんじゃないのか?」

 前半が終わり、フィールドに立っていたメンバーがベンチに戻った時だった。
 木野からスポーツドリンクを受け取り、それを飲もうとしていた所へ掛けられた声に塔子が振り返れば、鬼道が駆け寄って来た。

「さっき、変な落ち方しただろう」

 言われ、塔子は「ああ」と頷いた。
 先ほど“ザ・タワー”で相手の攻撃を防ごうとしたのだが突破され、体勢を崩して着地に失敗したのだ。
 確かに少し膝を擦り剥いたが、大したことはない。

「心配しないで。こんなの怪我のうちに入らないわよ」

 ほら、と塔子はその箇所を指差して見せる。
 確かに血も出ていないし、かなりの軽傷だ。
 しかし、だからといって手当てをしなくていいというわけではない。

「お前、そのまま放っておくつもりだっただろう」

 膝を擦り剥いた程度の傷なら他に何人も負っている。
 マネージャーたちはいちいち気がついてハーフタイムの間に手当てをしてくれるが、血すら出ていない塔子の傷はおそらく見逃されるだろうし、塔子も申告しないどころか、自分で消毒すらしないだろう。

「そこに座れ。消毒液もらって来る」

 後ろのベンチを指して、鬼道はマントを翻す。

「え、別にいいって」

「お前がよくてもオレがよくない」

 すぐに断りを入れた塔子だが、鬼道の言葉に瞳を丸くした。

「え――」

「とにかく、座って待ってろ」

 塔子が彼の言葉の意味を訊ねる前に、鬼道は音無の元へ消毒液をもらいに行ってしまった。
 彼の耳が赤かったのは、気のせいだろうか。







え〜とえ〜とえ〜と…言い訳が思いつきません。