「エレメントハンター」 アリー&ロドニー&トム


「……リー! アリー! アリー!!」

 自分を呼ぶ声に、アリーはハッとした。
 しかし――

 ゴンッ

「〜〜〜〜〜っ!!」

 顔面を思い切りぶつけ、アリーは声にならない悲鳴を上げる。

「ぶっ」

「アリー!」

 トムが思わず吹き出し、先ほどからずっと彼女のことを呼んでいたロドニーは慌てて駆け寄った。

「大丈夫か、アリー!」

「え、ええ……」

 イタタ、と顔を押さえながらアリーは正面を見た。
 目の前にあるのは壁だ。
 そして移動中だった通路は自分の左手にある。

「どうしたんだ、アリー。ボーっとして危ないじゃないか」

「ええ、ごめんなさい。少し考え事をしていただけ、大丈夫よ」

「アリー……」

 平気だと微笑む彼女に、けれどロドニーは眉根を寄せた。
 最近、彼女はこんな風に心ここに在らずということがよくある。
 最近――ネガアースに、民間人の3人の少年少女が現れるようになってからだ。

「アリー、やっぱり君は彼らのことを……」

 ロドニーは心配そうにアリーを見つめた。
 彼の言葉に、アリーは曖昧な笑みを返す。
 遠くで誰かが見つめ合う2人の姿を見たら、良い雰囲気だと思ったことだろう。
 けれど、

「ひゃーっはっはっはっはっ!」

 大声で笑うトムのせいでそれも台無しだ。

「ア、アリーが、壁に、壁にゴンッて……! ダメだ、笑いが止まらない……!」

 どうやらツボに入ってしまったらしい。
 腹を抱えて爆笑するトムを、ロドニーが睨むように振り返った。

「おいトム、アリーだってわざとじゃないんだからそんなに笑うな! 失礼だろ!」

「だ、だって、ゴンッて……! 思いっ切りゴンッて……!」

 ひーっ、とトムは目尻に涙まで浮かべて笑い続ける。
 ロドニーは呆れ、ハァ〜ッと溜息をついた。

「アリー、バカは放っておいて早く行こう」

 ロドニーはアリーの背中へと手を回し、先へと促した。

「あーっ、2人とも待てよ!」

 自分を置いて歩き出したロドニーとアリーをトムは慌てて追いかける。
 まだ、腹は抱えたままだった。







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