「しゅごキャラ!」 空海×歌唄


「よっ」

 ライブハウスでのライブを無事に終え、楽屋へと戻った歌唄は出迎えた人物を見て怪訝そうな顔になる。

「何であんたがここにいるのよ、空海」

「何だよ、その言い草は。見に来てたに決まってんだろ?」

「ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだけど?」

「さっき三条さんに捕まって、ちょっと電話して来なきゃだから歌唄が戻ってくるまで留守番しててくれって頼まれたんだよ」

 ハハッと暢気に笑う空海に、歌唄はフゥと息をついた。

「そう、ありがとう。でももういいわよ。着替えるから出て行って」

 言って、歌唄はまだ閉めていなかった楽屋のドアを大きく開き、空海に出て行くよう促す。
 はいはい、と返事をしながら空海も座っていた椅子から立ち上がった。
 そのままドアまで真っ直ぐにやって来る。

「――平気か?」

 ドアの手前で立ち止まり、空海が呟いた。
 歌唄は驚いて彼を見つめる。
 彼の視線はドアの向こう側へ向けられていて、歌唄のことは見ていなかった。
 歌唄は空海の横顔をじっと見つめ――フッと微笑む。

「大丈夫よ。あたしを誰だと思ってるの? お客さんが少なかったくらいでへこんだりしないわ」

 このライブハウスは立地場所が悪い。
 とはいえ、収容可能人数の半数も入らなかったというのはさすがに応える。
 それでも。

「歌える場所がある。それだけで、あたしは十分幸せよ」

 そう言う彼女の言葉には、ウソも迷いもない。
 微笑む彼女は、本当に幸せそうだった。

「そっか」

 歌唄へと顔を向け、空海もニッと笑う。

「頑張れよ。オレはいつだって応援してるぜ」

 ポン、と彼女の頭を撫で、空海は楽屋から出た。

「ちょっと、子供扱いしないでよ」

 頬を膨らませているであろう歌唄の言葉を背中で受け、振り返らずに空海は手を振った。
 彼を見送り、歌唄はフゥと溜息をつく。
 その顔に、笑みを湛えて。

「当たり前でしょ。あんたに応援されて、頑張らないわけないじゃない」

 小さく呟かれたそれは、ドアがパタンと閉まる音に紛れて消えた。







歌唄ちゃんが再スタートしたばかりの頃。