「イナズマイレブン」 風丸×春奈(×より&寄りかも)


「ご苦労様でした」

 フッと目の前に落ちた影に顔を上げれば、音無さんが立っていた。
 どうぞ、と手に持っていたタオルを差し出されたので、ありがとうと受け取る。
 特訓で掻いた汗を拭き始めれば、彼女は隣に腰を下ろした。
 遮られていた西日が再び注ぎ、眩しさに瞳を細める。
 仲間たちはそれぞれにダウンをしたり水を飲んだりして、疲れた体を休めていた。

「風丸さん」

 呼ばれ、隣の音無さんへと視線を向ける。
 彼女はどこか困ったような顔をしてこちらを見ていた。

「あの……大丈夫ですか?」

「え? これぐらいの特訓、いつものことだろ?」

 練習は厳しくて、終わった後はいつもヘトヘトだ。
 だから疲れているといっても、いつもと同じだ。
 それなのに妙に深刻な面持ちでいる音無さんを不思議に思い、首を傾げた。

「あの……そうじゃ、なくて……」

 彼女が視線を彷徨わせる。
 少しの間そうやって何か言いよどんでいたが、やがて胸の前で小さく拳を握り、意を決した様子で顔を上げた。

「風丸さん、最近何だか……その、思いつめてるような顔してることが多いので……」

 瞳を瞠る。
 指摘されたことに驚いた。
 けれど、自分がそれを実は自覚していた事実に、たった今、気がついて。
 そのことに対して、とても驚いた。

「――そうか」

 頷いたのは、彼女に対してか、それとも。

「心配してくれたんだな。ありがとう」

 ぽん、と頭に手を置いて撫でてやれば、音無さんはくすぐったそうに笑った。
 それでもまだ、どこか不安げな瞳が残る。
 その瞳に見つめられるのが、どこか苦しく感じた。

「そろそろ行くよ。早くシャワー浴びたいんだ」

「はい、私も夕食作りに行きますね」

 彼女の視線から逃げるように立ち上がれば、音無さんはいつもの笑顔で微笑んでいた。
 それがなぜだか眩しくて、目を逸らすように顔を上げる。
 仰ぎ見た東の空に、暗い闇が広がり始めていた。







風丸離脱前。お礼文なのに暗くてすみません;